GAE gen1 で動いている PHP5.5 で作った個人開発サービスを gen2 PHP8.2 へ移行した1年記 〜 その 4
Tuesday, April 30, 2024 01:52:00 PM
この記事は GAE gen1 で動いている PHP5.5 で作った個人開発サービスを gen2 PHP8.2 へ移行した1年記 〜 その 3 の続編となります。
PHP 8.2 で実行できるように修正していく
ひとまずロジック部分については 8.2 環境で PHPUnit でテストできるようになり、CI も動作するようになったので、アプリケーションを起動して動くのかを試していきたいと思います。
Memcache の残りを移行する
Memcache は Redis に移行したのですが、単体テスト外の部分にも少し残っていたので、こちらのコミット で対応しました。
移行方法は GAE gen1 で動いている PHP5.5 で作った個人開発サービスを gen2 PHP8.2 へ移行した1年記 〜 その 2 でも実施した内容なのですが、DI 部分と設定ファイルのデフォルト値、READMEの説明を修正しました。
GAE のアプリケーションバージョンを新しく設定する
GAE では通常のトラフィックを古いバージョンへ向けて、新しいバージョンもデプロイして別のURLから実行できるようにする機能があります。 dev_appserver.py での実行が困難になっているので、新しいバージョンを GAE にデプロイして動作するのかを検証していくことにしました。
今回はバージョン2として修正しました。
GAE で動かすにあたり php.ini も変更が必要だったので、拡張に redis を追加して修正しました
デプロイして動かしてみる
全然動きませんな (^^;;
まず問題を切り分けるために、まだビジネスロジックに分岐できていなかったデバイス値の取得処理を Google Cloud Storage から取得する処理をテスト可能なサービスとしてリファクタリングしました。
あとセッションの保存場所を設定する必要があったので、いったん php.ini
に session.save_path=Google\AppEngine\Api\Memcache\Memcache
を追加しました。
依存のライブラリもいくつか PHP 8.2 環境だと動かないものがあったのでアップデート。
いったんそれらの修正コミットがこちら。
で、いろいろやっていくうちに、そもそも slim3 だと PHP 8系で動かないな…という基本的なところに気づきました(さいしょから考えておけよという話)。
Slim3 から Slim4 に移行していく
幸いなことにこちらに関してはインターネットに移行記事がたくさんあり、とても参考になりました。
今回の移行に関するコミットがこちらです。
依存関係の更新
- slim 3.1 を 4.12 に
- monolog のアプデ
- BASIC認証のライブラリ
tuupola/slim-basic-auth
のアプデ - セッションミドルウェア
akrabat/rka-slim-session-middleware
のアプデ - PSR7実行が外部依存になったので
slim/psr7
の追加 - DI が外部依存になったので
php-di/php-di
の追加 - Google Cloud Storage がランタイム外になったので
google/cloud-storage
の追加
php-di への移行
もともとは Slim3 のアプリケーションコンテナを使っていたので、こんな感じでやっていたのを
// Instantiate the app
$settings = require __DIR__ . '/src/settings.php';
$app = new \Slim\App($settings);
以下のように変更しました。
use DI\Container;
$settings = require __DIR__ . '/src/settings.php';
$container = new Container();
$container->set('settings', $settings['settings']);
続いてDIコンテナの初期化処理化を
require __DIR__ . '/src/dependencies.php';
のように指定していたのを
use Slim\Factory\AppFactory;
$dependencies = require __DIR__ . '/src/dependencies.php';
$container = $dependencies($container);
AppFactory::setContainer($container);
$app = AppFactory::create();
このように変更しました。
- コンテナを初期化
- 環境設定の注入やコンテナの初期化を実行
- AppFactory でアプリケーション初期化
のような実装に変わります。
Slim4 っぽい書き方に変更
もともとは
// Register middleware
require __DIR__ . '/src/middleware.php';
// Register routes
require __DIR__ . '/src/routes.php';
こんな感じでミドルウェアとルーティングの設定を書いていたのですが、
// Register middleware
$middleware = require __DIR__ . '/src/middleware.php';
$middleware($app);
// Register routes
$routes = require __DIR__ . '/src/routes.php';
$routes($app);
Slim4アプリを引数で指定して設定するように変更しました。
$app
をグローバル参照から引数参照するコールバック関数に変わったぐらいです。
Basic認証の修正
登録済みのデバイスからデータを受信するAPIでは、Basic認証ミドルウェアを設定していて、 callback
という処理が呼び出されることになっていました。
//
// For Registered Devices
//
$app->post('/api/devices/{id}/values', '\ToiletEvolution\Controllers\DeviceValuesController:add')
->add(new \Slim\Middleware\HttpBasicAuthentication([
"authenticator" => new ToiletEvolution\Middlewares\HttpBasicAuthentication\DeviceAuthenticator($app->getContainer()->get('DeviceStore')),
"callback" => function($request, $response, $arguments) {
$route = $request->getAttribute('route');
$id = $route->getArgument('id');
return $id === $arguments['user'];
},
"secure" => false
]));
Slim4でのBasic認証では before
が呼び出される様に変わっています。
//
// For Registered Devices
//
$app->post('/api/devices/{id}/values', '\ToiletEvolution\Controllers\DeviceValuesController:add')
->add(new \Tuupola\Middleware\HttpBasicAuthentication([
"authenticator" => new ToiletEvolution\Middlewares\HttpBasicAuthentication\DeviceAuthenticator($app->getContainer()->get('DeviceStore')),
"before" => function($request, $response, $arguments) {
$id = $arguments('id');
return $id === $arguments['user'];
},
"secure" => false
]));
コントローラーの修正
APIでJSONを返却するときの処理が標準ではなくなったので、JSON文字列を出力する JsonRenderer
のようなクラスを作ります。
namespace ToiletEvolution\Renderer;
use Psr\Http\Message\ResponseInterface;
final class JsonRenderer
{
/**
* Write JSON to the response body.
*
* This method prepares the response object to return an HTTP JSON
* response to the client.
*
* @param ResponseInterface $response The response
* @param mixed $data The data
*
* @return ResponseInterface The response
*/
public function json(
ResponseInterface $response,
mixed $data = null,
): ResponseInterface {
$response = $response->withHeader('Content-Type', 'application/json');
$response->getBody()->write(
(string)json_encode(
$data,
JSON_UNESCAPED_SLASHES | JSON_PARTIAL_OUTPUT_ON_ERROR
)
);
return $response;
}
}
で、それをコントローラのコンストラクタで初期化して、APIメソッドで呼び出します。
class DevicesController
{
protected ContainerInterface $ci;
private JsonRenderer $renderer;
public function __construct(ContainerInterface $ci)
{
$this->ci = $ci;
$this->renderer = new JsonRenderer();
}
public function index(ServerRequestInterface $request, ResponseInterface $response, array $args)
{
$deviceModel = $this->ci->get(Device::class);
$data = array_map(function($device) {
return $device->toArrayWithoutSecret();
}, $deviceModel->all());
return $this->renderer->json($response, $data)->withStatus(empty($data)?204:200);
}
Slim3 では以下のようなコードで $response->withJson
でよかったところが変更になっています。
public function index($request, $response, $args)
{
$deviceModel = $this->ci->get(Device::class);
$data = array_map(function($device) {
return $device->toArrayWithoutSecret();
}, $deviceModel->all());
return $response->withJson($data, empty($data)?204:200);
}
ミドルウェアの修正
PSR の書き方が変わっているので、それに応じて修正しています。
class RequireLoginMiddleware
{
public function __invoke($request, $response, $next)
{
if(empty($this->session->get('current_user')))
{
$response = $response
->withStatus(302)
->withHeader('Location', $this->redirectIfNotLogin);
}
else
{
$response = $next($request, $response);
}
return $response;
}
こんな感じだったのが、以下のように変更になっています。
class RequireLoginMiddleware
{
public function __invoke(Request $request, RequestHandler $handler): ResponseInterface
{
$response = new Response();
if(empty($this->session->get('current_user')))
{
$response = $response
->withStatus(302)
->withHeader('Location', $this->redirectIfNotLogin);
}
else
{
$response = $handler->handle($request);
}
return $response;
}
引数が変更になっていて、 $response
がなくなって、次のミドルウェアへ処理を引き継ぐのが $next
から $handler
に変わっています。
$response
はミドルウェアごとに作成して設定していきます。
次のミドルウェアに引き継ぐときは、 $handler->handle
で呼び出してレスポンスを取得します。
さいごに
Slim3 から Slim4 への移行手順がインターネットに多くあって助かりました。 また Slim 関連の OSS パッケージも 3 から 4 への移行をドキュメントにしてくれていたので、比較的スムーズに移行できたと思います。
ここではその一部を紹介する感じになりましたが、同じような対応をする人に役立つ内容になっていれば嬉しいです。